「生命保険で相続税の対策ができる」と聞いたことがある人もいらっしゃるのではないでしょうか。
遺産を相続すると、相続税の納税義務が発生します。
しかし、生命保険での節税対策がどのような仕組みになっているのかご存じない方も多いです。
そこで今回は、相続税と生命保険の関係、生命保険が相続税対策に有効な理由、相続税対策に利用できる生命保険の種類について解説します。
この記事を参考に、ご自身の生命保険が相続税対策をできるものなのか、確認してみてください。
生命保険で「相続税対策」ができる!
結論から申し上げますと、生命保険で相続税対策をすることは可能です。
死亡保険金の受取人の設定方法により、相続税の「非課税枠」を利用できます。
そもそも相続税とは、死因による相続財産、みなし相続財産、生前贈与財産などにかかる国税です。
生命保険の死亡保険金は、被保険者が亡くなられたことで発生する財産になるので、税法上「みなし相続財産」となり、相続税が課税されます。
ただし、生命保険の契約者・被保険者・受取人の組み合わせによって、死亡保険金に課税される税金の種類が変動します。
まずは現在加入している生命保険の契約内容を確認し、死亡保険金が相続税の対象となるかどうか、調べてみましょう。
【死亡保険金への課税】
保険契約者 | 被保険者 | 保険金の受取人 | 税金の種類 |
夫 | 夫 | 妻・子 | 相続税(非課税枠有) |
夫 | 夫 | 法定相続人以外 | 相続税(非課税枠無) |
妻 | 夫 | 妻 | 所得税・住民税 |
妻 | 夫 | 子 | 贈与税 |
生命保険が相続税対策に有効である理由とは
相続税対策として生命保険が適しているのは、主に以下の4つの特徴を持っているからです。
1.生命保険の非課税枠を活用できる
2.受取人を指定できる
3.納税資金の準備ができる
3.資金調達がスムーズにできる
1.生命保険の非課税枠を活用できる
契約者・被保険者が被相続人(故人)で、死亡保険金の受取人が妻や子など、法定相続人になっている保険契約の場合、一定額が「非課税財産」となり、相続税の課税対象額から差し引くことができます。
【死亡保険金の非課税限度額】
500万円×法定相続人の数=非課税限度額
※相続放棄者も人数に含める
例えば、相続人が妻・子2人の合計3人の場合、保険金のうち1,500万円までは相続税がかかりません。
遺産が現金や預金の場合は、全額が相続税の課税対象になるので、死亡保険金として受け取ることで、相続税を減らすことが可能になります。
2.受取人の指定をすることができる
被相続人(故人)が契約者で、保険金の受取人を指定していた場合、生命保険金は遺産分割協議の対象にはならず、相続人個人の単独相続財産となります。
死亡保険金の受取人を指定することで、遺産分割での話し合いによるトラブルを未然に防ぐことができ、被相続人が遺産を渡したいと考える人に、受け取ってもらうことができます。
ただし、相続を放棄しつつ受取人指定で死亡保険金を受け取った場合には、基礎控除だけでなく、保険金の全額に相続税がかかることになりますので注意しましょう。
3.納税資金の準備ができる
相続税を含め、国税の納付は現金で一括支払いをするのが原則です。
相続財産の種類は、現金・預金・保険金・土地・建物・自動車など多岐にわたりますが、換金の手間がかからず相続税の納付がしやすいのは、現金・預金・保険金などです。
4.資金調達がスムーズにできる
被相続人が亡くなった場合、被相続人の持っていた金融機関の口座は凍結されています。
病院への支払い、遺族の生活費や葬儀の準備などで現金が必要になっても、相続人間での遺産分割協議による所定の相続手続きが完了するまでは、原則として預金の払い出しなどができなくなってしまうので注意しましょう。
しかし、相続財産が生命保険金であれば(加入の保険会社にもよりますが)以下の手順で保険金をスムーズに受け取ることが可能です。
1 受取人が保険会社へ連絡、必要書類をそろえて保険金を請求
2 保険会社での審査通過(約1週間)
3 口座に振り込まれる
相続税対策に有効な生命保険
それでは、さまざまな生命保険の中で、相続対策に使える代表的な保険の種類を3つご紹介します。
1.終身保険
終身保険は、死亡保障が一生涯続く保険です。
保険料の支払期間は60歳や65歳など、定年の年齢で設定することが多く、保険料の支払いが終わった後も保障が続くため、死亡保険金を確実に受け取れます。
また、解約返戻金のある終身保険であれば貯蓄性も高いので、相続税対策になるだけでなく、遺族にも優しい保険といえるでしょう。
2.養老保険
養老保険とは、満期設定があり、契約期間内の死亡保障がある貯蓄性の高い保険です。
満期に契約者が生存している場合、満期保険金が支払われ、受取人が本人の場合には一時所得として所得税・住民税が課税されます。
契約者が亡くなってしまったときには、死亡保険金に非課税枠が適用されますので、相続税対策として活用することも可能です。
3.長期平準定期保険
長期平準定期保険は、保険期間を80歳以上に設定でき、長期で保険料が定額設定になっている定期保険です。
保険期間が長いため、保険料は終身保険よりも安く設定されているのが特徴です。
人生100年といわれる今の時代は、このような定期保険でも終身保険と同等の死亡保障を受けることができるようになっています。
ただし、注意したいのは、定期保険なので死亡保障の期間にも限りがあるという点です。
まとめ
今回は生命保険で、相続税の節税対策ができる仕組みについて解説してきました。
生命保険の契約者と被保険者が同一で、死亡保険金の受取人が法定相続人の契約であれば、非課税枠の設定があるので、相続税の節税ができます。
まずは現在加入中の保険内容と、死亡保険金に課税される税金の種類を確認してみましょう。
現在加入中の保険内容をわかりやすく一覧表にさせていただいております。
そうすることで、自分自身はもちろん、ご家族にもわかりやすくなります。
いつでも、お気軽にご相談くださいね。
将来のことを考えたときに、必要があればこの記事を参考に、相続税対策として新たに生命保険への加入を検討してみてください。